すごい。中国製のイヤホン。~WooEasy『DQSM D2』

 中国メーカーというと、とかく安かろう悪かろうのイメージがありますが、時々ビックリするくらいコストパフォーマンスの高い製品にあたることがあります。オーディオでもそれは同様。

今回のイヤホンは、ぶっちゃけ聴いた瞬間に惚れました。

WooEasy 『DQSM D2』です。

f:id:yorozubox:20160904180515j:plain

 

音質の印象など:
まずは、お手軽にXperiaで試聴してみました。使用するAndroidアプリは音質に定評のある有料アプリArmAmp(広告ありの無料版もあります)。Xperiaにプリインストールされている「ミュージック」もなかなか高音質ですが、ArmAmpはそれよりも一枚、二枚上手です。


WooEasy DQSM D2 は開放型ではなく、密閉型のイヤホンです。開放型のイヤホンは、音に広がりあるが音の密度は薄い感じに、密閉型は音の広がりは狭いが、そのぶん音に密度があるように感じられることが多いのですが、このイヤホンの場合は中庸と言ったほうがいいかもしれません。開放型ほどの広さはないが、かといって狭さも感じない、というバランスです。


なんといっても、このイヤホンにはあまり特徴らしい特徴がありません。

高音域がすごくよく伸びるわけでもなく、低音域がバンバンでるわけでもない、かといって中音域が厚いかといえばそんなこともない。「バランスのよい音」を目指したという、コンセプトがそのままサウンドに現れています。


それでいて、音質そのものは非常に高いレベルです。なによりも解像度の高さ、つまり情報量の多さについては、今までに聞いたことのある、ハイエンドクラスと呼ばれるイヤホンを含めても、トップクラスです。

音の反応が速く、非常に繊細で正確。そんじょそこらのイヤホンでは、他の音に埋もれて聞こえないであろう微かな音までなんなく再生します。低音がボワつくようなこともなく、引き締まった重みのある低音を再生します。

音の分離もよく、楽器の位置も描き分けます。音量を上げてもうるさくないのも、音がよい証拠です。

飽きることなく、「もっといろんな曲を聴きたい」と思ったのは、この価格帯のイヤホン、ヘッドホンでは初めてかも知れません。

 

DQSM D2 には、高音域と中音域、それぞれを担当する2基のBA(バランスドアーマチュア)ユニットに加え、低音域を担当するダイナミックドライバーユニットが組み込まれています。

一般にBAは解像度は高いがパワーが足りず音が薄くなりがち、ダイナミックドライバーはパワーはあるが解像度ではBAに劣るとされているので、中~高音域にBAを搭載し、パワーの必要な低音域をダイナミックドライバーで補うというのは理にかなった構成だと思います。


オーディオで言うところの音色(おんしょく)ーーつまり艶を感じる音色(ねいろ)であるとか、クールな印象であるとかーーですが、DQSM D2の場合、艶があるとか、暖かみがあるという感じではなく、どちらかといえばクール、無色で硬質、といって乾いた感じまではしないという、わりと中庸な音色です。

ここにも「ジャンルを選ばない」というコンセプトがそのまま現れているように感じます。ただ、人によっては分析的だとか、面白みが足りない、というような感想になるかも知れません。


メーカーの意図通り、バランスのとれた音なので、ジャンルは選びません。

そもそもの能力が高いので、クラシックも余裕でいけますし、それ以外のジャンルもそつなくこなします。

スマホなどで聴く場合には、好みに合わせてイコライザーで調整してみてもいいでしょう。原音主義の人にとっては邪道でしょうけど…。もとがフラットな音なので、多少いじっても破綻しにくいですし、味付けもしやすいと思います。

 

音漏れはそんなにないほうなので、よほど静かな場所じゃなければ大丈夫です。反対に、外の音はわりとよく聞こえます(シリコンチップの場合)。


その他 感想:
そもそも、Xperiaでここまでの音が出せると言うことに驚きです。

持っているヘッドホン、イヤホンのいくつかとも比べてみましたが、1万円台の国産イヤホンでは解像度が低すぎてまったく勝負にならず(それでもコスパが高いと言ってお気に入りだったイヤホンです)、(実売価格で)2~3万円台のヘッドホンと比べて同等くらい。音場の広さではやや負けるが、解像度ではDQSM D2がちょっと勝っているという印象でした。
「そのくらいならたいしてコストパフォーマンスは高くないじゃないか」と思うかも知れませんが、基本的にヘッドホンはイヤホンよりもコストパフォーマンスが高いので(スペースの制約が少ないせいでしょうか)、ヘッドホンのコストパフォーマンスを上回るというのはたいしたものなのです。

もっとも最近は、BAが主流になって、事情が少し変わってきているのかも知れませんが。

 

もしDQSM D2を使って、「そんなに音質よくないじゃないか」と思う人がいたら、音源を疑ってみたほうがいいかもしれません。MP3などは論外です。なまじ性能が高いので、音源の粗もダイレクトに表現してしまいます。CD音源とハイレゾ音源の差も、比べれば明確にわかります。

 

ただ欲を言えば「もう少し高音が気持ちよく伸びて、音場にももう少し広がりが感じられれば完璧なのに」と思います。とはいえ、この価格でこれだけの音質なのだから文句は付けられないですけど。


Xperiaでも十分な音質ですが、DACを通してヘッドホンアンプで聴いてみました。

駆動力の違いからか、線の細さがなくなって、音に安定感(イヤホンの駆動に余裕がある感じ)が出て、音場にも広がりが出ました。


販売店とメールで少しやりとりをしたのですが(相手は中国人だと思いますが、日本語が非常に堪能でした)、販売店によれば、DQSM D2はエージングに150時間必要なのだそうです。

そこまでエージングをすると「最初は耳障りに感じる高音も落ち着いて、素晴らしい音になる」とのこと。

もっとも、私は特に耳障りとは感じませんでしたが。「解像度が高いせいか、やや線が細いな」とは思いましたけど。

現時点では、エージング時間は40~50時間ほど。聴き始めよりも多少よくなっているような印象はありますが、まだまだよくなるんでしょうか。正直、エージングで劇的に変化したという経験はあまりないのですが、これ以上よくなるのだとしたら願ってもないことなので、期待しておきましょう。

ちなみに、この販売店(の担当者)。結構なマニアのようです。自分と同じ匂いがしました(笑)マニアはどこの国でも変わらないのですねえ。


付属品:
付属品は多いです。(シングルの)シリコンチップが大中小の3つ。(ダブルの)フランジタイプも3つ。ウレタンタイプが、硬め(黒)と柔らかめ(青)の2つ。そのほかに、チューニングフィルターが3つ。TDKフェライトコアが1つ。更には、リケーブル用のスペアケーブルが付いています。

f:id:yorozubox:20160904190020j:plain

 

付属チップ選びは重要です。チップによって、まったく聞こえ方が変わったりもするので。自分の耳と好みに合う物を選ぶのが肝要です。

ぱっと聴いた印象としては、最も解像度が高いのがシリコンチップ。少し抑え気味になるがバランスが良いのがフランジタイプ。ややデッド気味だけど柔らかい音になるのがウレタン。

チューニングフィルターは編み目の粗さが違うようです。こちらはちゃんと聞き比べをしていないのですが、以前別のイヤホンで、フィルターを外すと音がよくなったことがあるので、いまは一番目の粗いものを使っています。外して使ってもいいんですが、耳垢が入りそうなので…(^_^;)


スペアケーブルは、もともとDQSM D2に付属している物ではなく、お店のお薦め、プレゼントだそうです。袋に「gift」と書いてあります。

このケーブルは、シリコンのような素材で被覆されていて、やや細いですが、しなやかで取り回しがいいです。

お店に寄れば、こちらのほうが音場の広さや音の輪郭がよく聞き取れるのだとか。

私はどちらかというと標準のケーブルのほうが硬質な感じで好きなのですが、使い勝手では、軽くてしなやかなgiftケーブルのほうが断然いいです。タッチノイズも少ないですし(だから最近はこちらを使っています)。標準ケーブルは、金属のパーツがケーブルの途中に付いているせいで重いのです。

この価格でリケーブルできるイヤホンというのも素敵ですが、最近はリケーブルも珍しくないのかな。

 

外箱は一見して豪華ですが、細部の作りがちょっと雑だったりするところは中国製品ぽいかもしれません。

でもいいんです。箱がどうだろうと、音質には関係ありませんから。

f:id:yorozubox:20160904190115j:plain


マニュアルらしきものがなかったので、あと日本語マニュアルが付いていれば完璧ですね。

付属品の説明とか、リケーブルのやり方とか、サポートに関することとか。

f:id:yorozubox:20160904190157j:plain

 

最後に:
音質のことばかりで、イヤホンの外観に触れるのを忘れていました。
デザインは良くも悪くも無骨。質実剛健な感じ。

アルミ筐体の磨きが少々甘いので、国産製品並にピカピカに磨くと、より高級感が出ると思います。プラスチック部ももう少し艶々して高級感があるといいですね。

f:id:yorozubox:20160905205729j:plain


付属の標準ケーブル(giftでないほう)は布巻でやや太め、そのためケーブルは絡みにくく、その代わりタッチノイズはやや気になります。

プラグの素材は金属で、ケーブルの途中にも金属のパーツ(おそらく飾り)が取り付けてあり、重厚で、実際に重いです。ただ、イヤーフックが付属しているので、それを取り付ければ、重さはあまり気にならなくなります。

TDKフェライトコアもおそらくはこのケーブルの付属品で、私はケーブルの根元付近に取り付けて使用しています。

 

実は今回、サンプルを提供していただいてのレビューです。

でも、「惚れた」のは本当。自信を持ってお勧めできるイヤホンです。

ちなみに、中国からの発送で到着までは3~4日掛かりました。